- しつけ教室で首輪にしてくださいといわれた
- 首輪とハーネスってどっちがいいの?
- ハーネスのほうが楽だからハーネスがいいけどダメなの?
首輪がいいのか悪いのか、ハーネスではしつけはできないのか、悩んでいる飼い主さんによく相談されます。
結論からいうと首輪+リードでしつけをしたほうがやりやすいです。理由は首輪は犬をコントロールしやすい犬具だから。
私は普段の散歩もしつけトレーニングも全部首輪でこなす派です。長年使い慣れているので、首輪で困ったことはありません。
首輪で気管虚脱や首を痛める話は確かに聞きますが、私の周りでは首輪で体を痛めた犬はいません(みんなきちんとしつけしてるからかな)。引っ張りグセをしつけせず放置したり、飼い主がリードを変に引っ張ったりしなければ、首輪で体を痛めることはないです。
ハーネスはすでにしつけが完了している犬に使うか、骨格に不安のある犬や老犬に使用します。基本的に引っ張る力が弱い超小型犬向けの犬具です。
そこで今回は、首輪とハーネスそれぞれのメリット・デメリットや、なぜ犬のしつけやトレーニングは首輪でといわれるのか解説します。首輪を使うべきか悩んでいたら、ぜひ参考にしてください。
1.犬のしつけは首輪じゃないとダメって本当なの?
犬のしつけは首輪のほうがやりやすいです。しつけを効率よく進めたいなら首輪にしましょう。
慣用句に「首根っこを押さえる」という言葉があります。哺乳類は首根っこ(頚椎のあたり)を押さえられると自由に身動きができない構造になっています。
犬に首輪をつけたら「いつでも犬の首根っこを押さえる」ことができる状態です。犬は行動を制限されてトレーニングに集中しやすく、興奮・抵抗しても制御しやすい状態になります。
また、首輪はリードを少し動かしただけでも犬に振動が伝わります。そのためリードの動きで細やかな指示を伝えられます。
一方でハーネスは、もともとは犬ぞりや荷車を引くために作られた犬具です。
ハーネスは犬の体に重量や衝撃がかかっても負担がないようにできているため、リードを強く引っ張っても犬は平気です。その代わりにリードワークによる意思伝達ができません。
トレーニングでは声掛けとリードワークで犬とコミュニケーションを取るため、リードワークが伝わりやすい首輪が推奨されています。
2.しつけ教室で「ハーネスNG・首輪のみ」といわれる理由
- 訓練士は首輪で習うから
- リードワーク技術の習得のため
- 問題行動の改善は首輪が有利
しつけ教室で首輪でお願いしますといわれる一番の理由は、訓練士がトレーニング技術を習得するカリキュラムは首輪の使用が前提だから。
訓練士が自分の学んだ技術を正確に飼い主と犬たちに伝えるなら、当然首輪でトレーニングをしないといけません。ハーネスではやり方が変わるため、学んだ訓練技術がいかせず意味がなくなってしまいます。
さらにハーネスはリードでのコミュニケーションがとれません。リードワークなしで声掛けのみで犬を教えることになりますが、素人の飼い主には難易度が高すぎてしつけの完成度が下がるおそれが出てきます。
また、飼い主が直したい問題行動トップの【拾い食い】や【引っ張りグセ】は、ハーネスでは早期の改善はできません。早く悪い行動をなおすなら首輪のほうが断然有利です。
ただし気管虚脱や骨格に問題があって、首輪の使用が好ましくないと獣医師にいわれている場合は、その旨を説明すればハーネスでのしつけに対応してくれることもあります。
3.【首輪orハーネス】それぞれの特徴とメリット・デメリットを解説
首輪もハーネスもそれぞれにいいところもあれば、いまいちな点もあります。よく理解して愛犬と飼い主が快適にいられるように選びます。
3-1.ハーネスと首輪の特徴を比較
首輪とハーネスを以下の項目で比較してみましょう。
比較項目 | 首輪 | ハーネス |
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体への負担 | 首に衝撃が集中する | 衝撃は上半身(胴前部)に分散される |
向いている犬 |
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しつけのやりやすさ | やりやすい | やりにくい |
装着のしやすさ |
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サイズ合わせ |
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価格 | 安価 | 高価 |
種類 |
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首輪もハーネスも、それぞれに向いている犬や使う場面に差があり、愛犬の状態にあわせてどちらかを選びます。
どちらが犬具として優れているとかはないので、変なマウントはやめましょう(本当にやめてください)。
3-2.首輪のメリット・デメリット
首輪のメリットは、何と言っても装着が楽でリードワークが伝わりやすいこと。デメリットは首への負担が気になることです。
- リードワークが伝わりやすい
- しつけがやりやすい
- 装着が楽でつけっぱなしも可能
首輪は散歩中たトレーニング中の犬とのコミュニケーションが取りやすいです。リードワークがちゃんと出来ると、首への負担もそこまでかかりません。
布製の軽い首輪ならつけっぱなしも可能なので、普段から迷子札とともに装着しておくと、万が一の脱走や災害時に役立ちます。
- 首に負担がかかる
- 首の毛が擦れる・切れる
首輪の場合、引っ張りグセを放置すると首へ負担がかかり続けることが問題です。首に強い負荷がかかり続けると、気管虚脱という外傷性の呼吸器の病気になることも懸念されます。
毛質が柔らかい犬だと首輪をしている部分の毛が擦り切れたり毛玉でみすぼらしくなることも難点です。被毛を守るための柔らかい革製の首輪などで対策したり、つけっぱなしを避けるなど工夫をしましょう。
3-3.ハーネスのメリット・デメリット
ハーネスの良さは犬の体に負担がないことです。機能やデザインも豊富なので、幅広い選択肢の中から体型や年齢に見合ったものが選択できます。
- 体に衝撃や負荷がかからない
- デザインバリエーションが豊富
筋肉量の少ない小型犬の場合、首輪だと負担が大きすぎるときにはハーネスを選択します。
老犬で踏ん張りが効かなくなってきたときなど、急なリードの動きが負担になってきたときもハーネスが役立ちます。
- リードでのコミュニケーションができない
- 引っ張りグセを助長する
ハーネスのデメリットはコミュニケーションが取りづらいことです。犬が勝手に行動を取りやすくなりますから、声掛けは首輪のときよりしっかりめにしてください。
ハーネスをグイグイ引っ張っても犬は苦しくなりません。飼い主がどんなに「引っ張らないで」と注意しても、犬にデメリットがないためなかなか引っ張るのをやめず、しつけ期間が長引いてしまうことも問題です。
4. 【首輪VSハーネス】どちらがいいかはケースバイケース
よく聞く「首輪とハーネスとどっちがいいか」論争。どちらにもメリット・デメリットがあるので、良し悪しはありません。
飼い主の考え方やライフスタイル、愛犬の体の状態にあわせて選びます。
4-1.体重5kg未満の超小型犬はハーネスのほうが無難
成犬時の体重が5kg未満で骨格が脆弱な犬は、リードを軽く引いただけでもこらえきれず転んでしまったり、リードショックで首を痛めたりします。
ハーネスは犬に不意に外からの力が加わっても犬に衝撃がいかず、リードを引っ張ったときも犬の重心が安定していて気管に負担がかからないようになっています。
そのため一部の獣医師は、超小型犬や小型犬の中でも華奢な見た目になるように意図的にブリードされた犬は、首輪よりもハーネスのほうが向いていると発言しています。
- 転んだり怪我したりしにくい
- リードを強く引いても負担が少ない
- 引っ張りグセがあっても力が弱く問題になりにくい
ただし「超小型犬は絶対にハーネスでないとダメ」は言いすぎです。飼い主がリードを正しく扱えて犬に引っ張りグセがなければ、超小型犬や華奢な犬でも首輪で大丈夫です。
小型犬で骨格が華奢だったり筋力が弱く体幹がしっかりしていない犬で、飼い主がリードを引くのに不安なら、普段の散歩などをハーネスでするほうが無難です。
4-2.首輪のほうがコミュニケーションが取りやすい
首輪を使うとコミュニケーション手段が【リードワーク】と【声掛け】の2種類になります。ハーネスでは【声掛け】のみになるので、首輪は単純にコミュニケーション強度が2倍になります。
慣れてくるとリードをチョンチョンとするだけで、犬に飼い主の意図が伝わります。喋る必要もなく、マスク着用時の声が届きにくいときでも犬と意思疎通がしやすいこともメリットを感じます。
リードワークを正しく習得するためには人も犬もきちんと習う必要があり、大変だと感じる人もいます。リードワークが苦手な人には、首輪よりもハーネスのほうが楽かもしれません。
4-3.問題行動の改善は首輪着用になる
問題行動の改善は、基本的に首輪とリードで行われます。
- 拾い食い
- 引っ張りグセ
- 飛びつきグセ
- 威嚇・吠え
問題行動に発展するほど行動が強化されると、いけない行動を取ったときにリードショックと強い制止の掛け声で犬を止める必要がでてきます。
ハーネスではリードショックを与えられないため、首輪でのトレーニングになります。
4-4.ハーネス抜けをする犬には首輪がおすすめ
ハーネスは装着の仕方によっては簡単にすっぽ抜けます。中には「忍者かよ!」と突っ込みたくなるほど上手にハーネス抜けをする犬がいます。
ハーネス抜けを覚えてしまった犬は何度も繰り返します。ハーネスの種類を変えるのもありですが、しつけをきちんとして首輪へ変更するのが一番簡単な解決策です。
首輪に比べてハーネスはサイズ合わせがシビアです。少しでもゆるいと簡単に抜けてしまうので、活発で動きの大きい犬にゆったり装着させるとかはできません。
ゆるゆるにハーネスを付けるくらいなら首輪に変更をしてください。ハーネスを使い続けるなら、きっちりジャストサイズに調整します。
サイズの合わせ方がわからない場合は、ちゃんとした知識を持つスタッフが居るペットショップ、しつけ教室、動物病院などで装着状態を確認してもらいましょう。
4-5.迷ったときは飼い主の好みで決めていい
私はとくに骨格や健康状態に問題がなければ、リードワークが伝わりやすい首輪をおすすめします。
引っ張りグセがある場合はハーネスに、という意見もあります。しかしハーネスはリードを引っ張る習慣を助長するため事故を招きやすく、私は安易にハーネスを選択することに反対です。
ハーネスにして引っ張られても大丈夫にするのではなく、リーダーウォークを習得しましょう。引っ張らずに歩けるなら、首輪でも犬に負担はかかりません。
しつけができている場合、普段の散歩を首輪でするかハーネスにするかで迷ったら、飼い主の好みで決めていいですよ。
5.【首輪もハーネスも】正しく装着することが必須
首輪やハーネスを正しく装着できない、正しい装着位置を知らない飼い主も多いです。事故やケガにつながるため、きちんとした知識を身に着けましょう。
5-1.正しい首の装着位置と維持の仕方
首輪は犬の顎の奥と耳の後ろのラインを結んだ位置につけるのが正しい装着方法です。普段見慣れている首輪の位置は実はズレています。
トレーニングや散歩のときは首輪を正しい位置に調整し、ずり落ちないようにリードを上方向に維持しておくのがポイントです。
下がってきてしまったら正しい位置に戻します。正しい位置に装着したときに指2本分くらいの余裕があるように長さを調整することも忘れずに。
首輪抜けする犬には、首輪が一定の大きさまで締まるハーフチョークタイプがおすすめです。
以下の記事では首輪の選び方や、しつけや普段の散歩に使いやすいおすすめの首輪も紹介しています。首輪の種類で迷われている方は、ぜひ参考にしてください。
【関連記事】犬の首輪は体に負担?メリットや選び方・おすすめアイテムを紹介
5-2.正しいハーネスの装着の仕方とコミュニケーション
ハーネスは8字型・H型・ベスト型などの種類があり、それぞれ装着方法が異なります。とくに8字型はゆるいと簡単に抜けてしまうため注意が必要です。
ハーネスは装着後にベルトすべての部分で指1本分の余裕がある程度に締めます。人間から見るとけっこうぴっちりしているように感じます。
これ以上ゆるいと脱げてしまったり、ズレて前足が変なところから出たりするので注意してください。
また、ハーネスは首輪よりもリードに繋がれている感覚が薄くなるため、犬の注意が飼い主から離れやすいです。
犬の注意が飼い主から離れすぎると散歩中の事故が増えます。ハーネスで散歩するときは犬の注意を自分に向けるように定期的に声をかけるなど飼い主が意識的に工夫してください。
6.首輪とハーネスはどちらもメリット・デメリットあり
しつけを首輪でやるかどうか、しつけ教室で首輪を勧められて悩んでいる方へ。首輪やハーネスのことを正しく知れば、悩みも解決します。
- 首輪はリードワークが伝わりやすくしつけがやりやすいが、首を痛める可能性あり
- ハーネスは体への負担が少ないが、コントロール性が低くしつけはやりにくい
- 訓練士は首輪でしつける前提で学んでいるため、首輪でないと教えにくい
以上のことを踏まえて首輪にするかハーネスにするか選択しましょう。